証
私は老人福祉施設で働いています。この時期になると、ミッションスクールの福祉科の高校生が実習にやって来ます。私は実習生担当の係りなのですが、私の子供といっても良いような年齢の学生さんとの価値観のギャップに向き合うことに少し困難を感じていました。とはいえ、実習に来た学生との心の隙間を埋めようと、色々話かけることがあります。
「何故この学校を選んだの?」と、普通科ではなく福祉科を選んだ理由を学生に聞きます。
長年実習担当をやってきたなかで、色々な答えを聞きました。例えば、
「私の性格にあっている・・・と思ったから」「理由は、親が入学しろ!と言ったから・・・イヤイヤ来ました」など様々でした。
今回の学生さんの1人に「自分はこの仕事は向いていません・・・」と実習を始める前から諦めていた子がいました。私たち職員も色々話しかけたり、励ましたり、やってみたのですが、この学生さんの気持ちはしっかり固まっていて、私たちの言葉はなかなか心に届かないようでした。一ヶ月しかない実習期間なのに、三週目も心はかたくなで熱意のない実習態度が続いていました。私はこの学生さんの学校に電話しようか?止めようか?と思い悩み、学校の名刺を眺めていると・・
「こんにちは!!お久しぶりです!!」と学校の実習担当の先生が施設に来られました。私は神様が連れて来てくれたと思い、この機会を使って、私の担当の学生のことを包み隠さず話ました。先生は「ありがとうございます」との言葉ではありましたが・・・・涙ぐんで話を聞いておられました。私の話が終わった時に、先生の方から
「私が話してみます。どうしても判らないのであれば、実習を中断して連れて帰ります。」と言われました。
それから、立ちぱっなしのお話がコンコンと続きました。学生さんも涙を浮かべて、肩も揺らして辛そうでした。私は自分の心の中を神様に見られたような気がしました。今は偉そうに色んなことを言って指導している私ですが、高校生の時の自分を振り返り、この学生さんとあまり変りなかったなぁと思わせられました。自分だけで大きくなったように思っていた私ですが、私が気が付かない所でいろんな方々のサポートがあったことに気付かされました。私の薄っぺらい指導の熱意とは違い、学校の実習担当の先生の深い愛情を感じました。自分の面子などはかなぐり捨てて本当に学生と真摯に向き合っておられる姿に感動しました。
その学生は学生で自分なりの殻を破ろうとしていました。叱られたその時から徐々に変化が見えてきました。
テモテへの手紙第二2章25節
反対する人たちを柔和な心で訓戒しなさい。もしかすると、神は彼らに悔い改めの心を与えて真理を悟らせて下さるでしょう。
このことがきっかけで、本当の意味での実習が始まったようでした。私もこの先生のように、愛情深く柔和な姿勢で真剣に本音で人と向き合うことが出来るようになりたいと考えさせられました